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大学院生

中井駿一朗先生 平成27年入局

初期研修医時代、まだ興味があること、やりたいことがしっかり定まっていなかった自分にとって、専門とする科の選択はいくら考えたところで答えの出ない難問でした。
様々な科を研修した中でそれぞれの科の良い点悪い点を見る機会もあり、余計迷うという状況でしたが、実際に神戸大学眼科で研修し、比較的早期から主治医として患者さんと向き合うことができ、白内障手術のように自らの手技が患者さんのQOLの向上に直結し、喜んでもらえる機会があること、医局自体の雰囲気がよく、確かな知識と技術をもった先生方に気兼ねなく相談したり指導を受けることができることなどを踏まえ、神戸大学眼科に入局し、眼科医生活をスタートすることになりました。

眼科診療は専門性が高く、新たに学ぶことの連続で、日々忙しくも楽しく過ごしていましたが、そこで大学院へ行くべきかという問題が脳裏にちらつき始めました。
医学生時代から存在は耳にしていたものの、不安定な労働環境でネズミの世話をしたりする何だか良くわからない所という印象があり、大学院に入って研究を行うということをあまり考えたことはありませんでしたが、同期の先生や上級医の勧めもあり、大学院生活に飛び込んでみることにしました。
結果として、自分の眼科医人生の基盤となる多くのことを学ぶことができ、大学院に入学して正解だったと感じています。
普段の診療を行っていくうえでの根拠となる教科書的知識というのは全て先人達が研究してきたことの積み重ねですが、今現在もわかっていないことが数多くあり、
現在進行形で無数の研究が行われアップデートされています。

そういった中で、ひと昔前には常識だと思われていたことが、今では非常識ということも少なくありません。
日々更新される最新の論文も玉石混淆であり、ある程度自分自身でその論文の信用性を判断して、
本当に患者さんにとって有益と思われるものだけを普段の診療に取り入れていくことが必要です。
その時に、自分自身で研究したことがあるからこそ、気が付くことができる部分があると思います。
また、大学院に入ることで、自分の専門領域を作ることができたのも大きな財産だと感じています。大学病院の専門外来に入って診療を行っていくことで、
特定の疾患についてはベテランの先生にも引けを取らないくらいの診療経験を得ることができ、自分の強みとすることができます。

また、研究データをしっかりまとめることができれば、国内外の様々な地で開催される学会に参加することができます。
ハワイやバンクーバーの学会に行って、発表を行い、学会場で勉強した上でですが、皆で色々観光して回ったことはいい思い出になっています。
神戸大学眼科ではハンズオンセミナーや研修説明会を定期的に行っていますので、少しでも興味をもってもらえた方は是非参加して、医局の先生に色々質問してみて下さい。このページをみてくれた先生方といつか一緒に働ける日を楽しみにしています。

2018年ARVO@ハワイ
2019年ARVO@バンクーバー

盛崇太朗先生 平成27年入局

仕事をしている姿くらいはカッコよくありたいな、と思ったのが大学院への始まりです。
正直に申しまして、強い思いでこれを勉強したい!、と思って大学院に入ったわけではありません。
大学院入学が決まった際に中村教授から何か研究したいテーマがあるか、聞かれたのですが、まだまだ眼科医になったばかりでよくわからない、と答えたのを覚えております。
しかし実際に神戸大学眼科の大学院に入った後は、臨床においても基礎研究においても様々な分野において、
日本の眼科のオピニオンリーダーである先生が神戸大学に多数いることがわかりました。
そのような先生方の熱い指導を受けることが出来、目の前の症例、研究の壁に出くわしたときに、ヒントや答えを得られる環境に恵まれておりました。
例えば一般診療をしていても自分の選択した治療法が正解だったのかわからない場面にしばしば出くわします。
大学の専門外来は、いわゆる難症例が多数存在し、難問の宝庫です。
そのような場合においても教官の先生から解答を得られるため、大学院での研鑽はいわば丁寧な解説付きの自分を鍛え上げるのに適切な問題集でもあります。

自分の知識が患者満足度を上げるというのはよく経験します。私は大学院にて緑内障を専門にしておりますが、時々ちょっとした緑内障の蘊蓄を患者さんに言います。
同じ眼圧でも片眼のみ視野狭窄が進行している患者さんに、そっち側の眼を常に下にして寝てないかと尋ねてみます。
すると旦那さんのいびきが五月蠅いので、常に旦那さんに背を向けて視野狭窄進行眼を常に下にしている、と答えるではありませんか。
実は側臥位の状態で寝ていると下の方の眼は眼圧上昇を来しやすく、緑内障が進みやすいという報告があります。
このような解決法を得たのは、大学院で緑内障の勉強をしているときに読んだ論文からでした。
また最近ダイエットで運動を始めた患者さんには、運動も緑内障に良い影響を与えることを伝えてcheer upを促します。
意外だったのは、珍しい症例なので世のため人のために還元したいので発表させてほしい、と患者さんに伝えた時です。今まで全ての患者さんが喜んでくれました。

自分の経験が珍しい事が嬉しいと思うのは、病気で苦しい思いをした分、その苦しみが人よりも大変だったということを認めてくれた気分になるからなのでしょうか。
まだ論文出来上がりませんか?と患者さんからありがたい叱咤激励を頂いた事もありました。
単に淡々と診療をこなす医者と、自分の病気の蘊蓄を語ってくれる先生、どっちが患者さんから見てカッコいいでしょうか?
研究って一般臨床から離れた仕事と思っていたのですが、そんなことは全然なかったです。
私は、学会発表にしても論文執筆にしても、初めての知見を世界に披露するのはカッコいい仕事の一つだと思っております。
豊富な知識や経験で学会会場のaudienceを納得させる、超一流の手術手技で患者さんが次々と短時間に治っていく、未来に繋がる基礎研究で新たな治療法を確立する、神戸大学の教員の先生方は皆さんそんなカッコいい仕事をしているばかりの先生です。
そのカッコいい先生方を目標としながら、目の前の患者さんや後輩の先生からもカッコよく映るように、眼科医として福山雅治に近づくべく日々を過ごしています。

2019年春 世界緑内障学会@メルボルンにて中村教授と

吉川敦子先生 平成27年入局

医学部5回生の実習で細隙灯顕微鏡を用いて友人の眼を観察し、その美しさに感動した私は眼科への憧れを強く抱くようになりました。
医学部卒業後、2年間の初期研修で「自分は内科向きではない、外科系向きだ」と強く確信し、進路を決めるにあたりいくつかの外科系診療科が選択肢となりました。
眼はきれいですし、毎日好きなものを見て仕事ができたら素敵だなと思う反面、眼という人体の中ではごく小さい部分のみを扱っていくことに少し抵抗がありました。
この点は多くの研修医の先生方が悩むところだと思います。
しかしながら、実際はむしろ逆で、特別器用でもなければ体力に自信がある訳でもない私のような人間にとって、専門性の高い診療科を選んだのは大正解でした。
眼という臓器は小さいながら複雑かつ精巧で、「百聞は一見に如かず」、「目は口ほどに物を言う」といった諺があらわすように、眼が果たす機能は計り知れません。
疾患も多種多様で、数多くある鑑別疾患の中から自分で「見た」所見をもとに診断を行い、治療も自ら行う眼科の診療は時に大変ですが、やりがいを感じるところでもあります。

眼の重要性は高いにも関わらず、眼疾患の診療は眼科の独壇場ですので、他科の先生から頼りにして頂けた時は大きな喜びを感じます。
眼科医生活が始まり、日々楽しく過ごしていた中で、大学院への進学を考えるようになりました。理由は単純で、せっかくだし知らない世界を覗いてみたいと思ったからです。
大学院では糖尿病モデルマウスを用いた基礎研究をさせて頂きました。
最初はマウスの扱いに四苦八苦しましたが、何もかも新鮮で楽しく貴重な経験となりました。
臨床では眼科医初年度に思い出深い症例と出会ったぶどう膜炎に興味を持つようになりました。
ぶどう膜炎は幅広い年齢の患者に生じ、重篤な視機能障害をきたすことがありますが、稀少疾患が多く、全国的に専門家は少ない分野です。
幸い神戸大学眼科ではぶどう膜炎診療の歴史があり、専門外来で勉強させて頂くことになりました。
細隙灯顕微鏡は赤血球の一つ一つを観察できるほど精密で、その扱いには習熟が必要ですが、結膜や強膜、角膜、前房、虹彩、隅角、水晶体、硝子体、視神経、網膜、脈絡膜・・・といった眼内/外の細かな所見を得ることができます。

ヒントのように散らばっている所見から診断を導いていく過程は、まるで探偵のようです。
ぶどう膜炎は治療に対する反応が早く、生き物のように状態が変化していくところも面白いです。かつては外科的治療に惹かれていた私ですが、今では生物学的製剤や免疫抑制剤を日常的に扱うようになり、どちらかというと内科的な診療が中心となっています。人生分からないものです。
ぶどう膜炎は眼科の中でも専門性が高く、大学でぶどう膜炎の診療経験を積んだことは大きな武器になりました。
神戸大学眼科教室では眼科全般を学ぶのはもちろん、若手のうちから専門性を育む機会を頂けますので、より良い環境で眼科研修を希望される先生にお勧めです。

日本眼科学会にて 大学院同期と
ARVO at Vancouver
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