大学院へ行こう!

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「大学院に行って、一体何のメリットがあるのか?」そう思ってませんか?
大学院に行くメリット、身近な点でいえば、市中病院では経験することのできない希少疾患を数多く経験できること、最新の治療をどの疾患にどのように適用すればよいかといった、今後の眼科医人生の核となる知見を、専門外来での豊富な症例を経験することで得ることができる点にあるでしょう。それは非常に意義深いことです。

しかし、本質的にもっと重要なメリットがあります。それは”無から有を創り出す知的体験ができること”あるいは"誰も気がつかなかった事実を発見して、情報を社会に発信する幸福感を手に入れられるチャンスがあること”。
何を大げさなと思うかもしれない。でも、これは本当です。

今、眼科臨床では加齢黄斑変性等の治療に抗VEGF薬の硝子体注射が当たり前のように行われています。 眼科医が経済を圧迫していると揶揄されるほどです。しかし、抗VEGF薬が眼科で臨床応用されるようになったのは、ここ15年ほどのこと。それまでは影も形もありませんでした。いろいろな原因で虚血状態(循環阻害)に陥った網膜が何か液性因子を産生してそれが新生血管を作る。そう考える臨床医が現れなければ生まれなかった治療法です。

現在当たり前のように手術が行われている黄斑円孔もまた、今世紀に入るまでは不治の病でした。 Gassという眼科医が黄斑円孔の成因に硝子体牽引が関与していることを、日々の症例を注意深く観察して突き止めるまでは。

現代は、 iPS細胞やIT技術を利用できるのでより多くの発見や発明ができる時代になったはずです。しかし、そうしたテクノロジーの進歩は、一般の眼科医からむしろ研究志向を奪っている側面があるようです。「重要な発見は、こうした最先端の知識と技術をもつ基礎研究者じゃなければ無理じゃないの?」眼科医が研究するなど無意味なのではないか。 そう考えてはいないでしょうか。
しかし、それは誤解です。純粋な基礎研究者は、実臨床の場で、目の前の患者が何に困っているか知りません。ビッグデータやAIの時代になっても、結局は臨床医が真摯に患者の声に耳を傾け、ガイドラインや教科書に書かれていることを絶えずcritical thinkingし、クリニカルクエスチョンを抱くマインドを醸成する中にしか、現場に役に立つアイデアは思いつきません。そして、そうしたニーズにこそ、基礎研究の萌芽が潜んでいるのです。

市中病院を回るだけでは既存の診断法や治療法を学ぶことがほとんどです。新規知見を自ら得ることも不可能ではないですが、日々の忙しい診療の中で、そういう経験ができるチャンスはそう多くはありません。

神戸大学眼科では、基礎研究分野でも臨床研究の分野でも、国内外から注目を集めている研究成果を発信し続けています。
基礎研究としては、中村のグループは、これまでただの老廃物とみなされていた乳酸が網膜神経節細胞のエネルギー基質として働き、その授受の障害が緑内障を始めとした網膜神経変性疾患に関与していることを提唱しています。楠原講師のグループは二光子顕微鏡を用いた生体でのグリアや神経細胞の挙動を、糖尿病網膜症をモデルとして観察する研究を進めています(図1)。今井講師のグループはフィブリノーゲンが嚢胞様黄斑浮腫とその後の神経変性に関与している可能性に関する研究を行っています。三木助教のグループはGWAS(genome-wide association study)を中心とした遺伝子多型解析やin vitro, in vivoのモデルで加齢黄斑変性や中心性漿液性脈絡網膜症の研究を展開しています。上田助教のグループは患者iPS細胞を用いて、Leber遺伝性視神経症の網膜神経節細胞死の病態解明の研究を精力的に行っています(図2)。

図1:2光子顕微鏡で撮影した生体マウス網膜におけるミクログリアと血管の関係
図2:iPSから網膜を作り、網膜神経節細胞だけ単離したもの

臨床研究としては、中村のグループは、緑内障の手術のビッグデータを用いた多施設共同臨床研究を主導するとともに、視路疾患の新規診断技術に関する医工連携研究を展開しています。中西准教授は小児眼科・視覚聴覚二重障害の疫学調査・多施設研究に取り組んでいます。今井講師のグループは低侵襲硝子体手術を中心に外科的治療法の新規開発・改良を進めています。長井病院講師は眼窩疾患の全国レジストリや甲状腺眼症の治験を行っています。坂本助教は光干渉断層計と視野検査を基に緑内障や視路疾患の病態解明に取り組んでいます。松宮助教はブドウ膜炎における光干渉断層計の有用性を示す国際共同研究を主導しています。上田助教は未熟児網膜症における抗VEGF治療に関する先進医療Bを立ち上げています。

これらはほんの一例です。きっと皆さんの興味ある、そして人生をかけて取り組みたくなるような研究にきっとであることでしょう。

是非、皆さんも、人生の若い一時期、夢中になれることに没頭し、世界に貢献できる何かを見出す知的冒険を行ってみませんか?

…膏春は何もかも実験である
(ロバート・ルイス・ステイープンソン)

(なお、専門医受験資格との兼ね合い、理研などへの国内留学、clinical courseの詳細等、不明な点や聞きたい点があれば、いつでもmanakamu@med.kobe-u.ac.jpまでメール下さい。)

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