留学紹介

金森章泰

ポスドクとしてカナダ・モントリオールにて留学しています。その体験記を紹介させてもらいます。

勤務しているのはLeonard.A.Levin教授の研究室で、Rosemont-Maisonneuve病院のリサーチセンター内にあります。
この病院はモントリオールのなかでは最も大きな眼科クリニックがあることで知られています。
Levin教授はもともとアメリカWisconsin大学眼科の教授でもあられますが、モントリオール大学の教授でもあり、ラボを2つ持っておられます。
神経眼科を専門にされておられ、カナダにおいては眼科のResearch Chairを兼任されています。
またArchives OphthalmologyのEditorであり、たくさんのテキストも執筆されています。

非常に多忙ではいらっしゃいますが、基本は僕のラボにおられ、細かな質問にも答えて下さいます。人柄はとても優しく、英語がしゃべれない僕に対してもペースを合わせて下さるgentlemanです。研究分野は網膜神経節細胞のアポトーシスを主に、活性酸素の関係や軸索伸長に関連する細胞内シグナル、神経保護薬の可能性を調べています。
HRA2が動物用にあり、これを使ったイメージングを主に行っています。このラボはスタートしてからまだ2年と新しいラボですがようやく軌道に乗ってきた感があります。
小さいラボではありますが、その分小回りがよくきき、動物施設と研究室とイメージングルーム等、必要なものが50歩以内にあるというのは大変恵まれた環境にあります。
大きなラボだと動物を動物施設から持ち出すだけでも大変ですが、このリサーチセンターでは動物の出し入れが非常にしやすく、特にイメージングを行う場合は大きな利点で、かなり時間を節約できていると思います。ちなみにこの1年で300匹のラットを使ってしまいました。。。。
また、Levin教授は神経病態学でPhDもとっておられ、分子生物学的手法にも通じておられます。日本にいたときよりもはるかに深い研究ができるのは素晴らしい経験です。

モントリオール

モントリオールはカナダの第2の都市で人口は約300万人です。
モントリオールがあるケベック州はカナダの中で独特の州で、フランス語が公用語となっています(英語は公用語ではありません)。
ちなみにカナダ全体では英語・フランス語ともに公用語です。なぜかというと元々カナダはフランス系移民が400年前にケベックシティに上陸したのが最初でしたが、最終的にイギリスがこのケベックの地でフランスに勝利を収めました。

フランス系移民(ケベコワと呼ばれています)は自らのルーツ、文化を守るため、ケベック州として独自の形態をとるに至ったのです。
ケベコワの急先鋒の人たちはカナダからの独立を考えているそうで、英語文化を廃絶する運動もあります。義務教育も基本はフランス語で行われています。
州全体でこのような対立があるのですが、教育や福祉の場にも顕著に見受けられます。モントリオールには英語系のMacgill大学とフランス系のMontreal大学があり、それに伴って、附属病院も英語関連とフランス関連に別れており、患者は英語フランス語のどちらを主におくかによって紹介先の病院が変わります。

また、医師がケベック州で働くためにはフランス語が必修となります。何故かLevin教授のラボはフランス系病院にあり、その病院では皆フランス語を話しているという状況です。僕のラボではボスがアメリカ人なのでもちろん英語で、他のラボにいるカナディアンは英語もしゃべれるので特に困ることはないのですが、標識や案内が全てフランス語なのでさっぱりわかりません。普段生活する分にはフランス語だからといって特に困ることはないのですが。

やはりカナダ、土地が余っていますので、どこへいってもきれいな公園があり、子供が安心して遊べるようにできています。またアメリカとは異なり、銃保持は禁止されていますので、治安が良いです。街並みもきれいで、特に紅葉の季節には日本人観光客がたくさん来ます。
冬は確かに寒いのですが思ったより厳しくありませんでした。大きな地下街がダウンタウンにあり(地下鉄3駅分がつながっています)、冬はそこで楽しむことができます。
また、20分ほどで本格的なスキー場があり、関西では味わえない素晴らしいコンディションでスキーやスノーボードができます。
また冬には近所の公園にいつのまにか本格的な雪の滑り台が登場し、いつも子供達が滑っています。短い夏にはモントリオーラーはBBQをしたりキャンピングをしたりと自然を満喫しています。

自然とすぐ触れ合えるのが一番の魅力でしょう。といっても休暇をしっかりとってカナダ以外に遊びに行く人が多いようですが(2週間旅行は当たり前のようです)。
これまで日本では研究に、臨床にと走り続けてきましたが、しばし立ち止まって研究にどっぷりつかることができるのはとても有意義な期間です。自分のアイデンティティーや環境を再認識するよい機会です。研究以外にも文化・言語の全く異なる地での生活は日本では経験することのない時間を与えてくれました。家族にとっても素晴らしい経験です。このような機会を与えて下さった根木教授ならびに教室の先生方、お世話になった皆様に心から感謝すると共にこの経験を活かせるよう、還元できればと考えています。

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