留学紹介

盛 崇太朗

University College London (UCL), Institute of Ophthalmology (IoO),
Translational Vision Research (Professor Francesca Cordeiro), UK (2021.9-)

渡英して2か月余りが経過しました。私は2021年9月よりロンドン大学(University College London, UCL)の 眼科研究所(Institute of Ophthalmology, IoO)に留学させて頂いております。IoOは世界的に有名なMoorfields Eye Hospitalに隣接しており、以前は楠原先生も留学されておられ、臨床と基礎研究の橋渡しを行う世界最先端のTranslational Researchが多数行われているところです。
私はその中のFrancesca Cordeiro教授のLabに所属しております。Cordeiro教授は、緑内障も専門であり、若い頃はレクトミー後の結膜瘢痕についてTGF-βの研究を熱心にされていたそうですが、その後DARC(Detection of Apoptosing Retinal Cells)と呼ぶ網膜のアポトーシス細胞を非侵襲的に可視化するimaging技術を確立され、緑内障や視神経炎モデルのみならず、Alzheimer型認知症やParkinson病など中枢神経疾患のモデル動物においても研究を行い、現在では実際の緑内障や加齢黄斑変性の患者さんに対してもOCTのように非侵襲的に網膜アポトーシス細胞の画像を撮る事に成功している、海外では珍しい臨床と基礎研究を同時にこなすClinician Scientistで、研究のベンチャー会社も起業するなど非常にpowerfulな先生です。
私自身はこちらで網膜神経節細胞の生存に関わる病態生理の解明に関する研究を行っております(といってもようやく少しずつ動き出したところですが。。。,)。

さてロンドンはPandemic後テレワークが一般化しており、IoOの中もかなりquietな状態です。
IoOの教授陣は基本的に家で仕事、Lab meetingなどはonlineで済ませ、研究室に常にいるのはTechnicianだけ、残りのmembersや大学院生が時折散見、という状況です。
幸い私自身はBossの許可もあり毎日通勤して早くLabに慣れるよう務めております。
Lab membersも常に異国の東洋人である私に気をかけてくれ、先日はLab内の大学院生に連れられ飲み会も参加してきました。

コロナ禍での留学であり、生活のset upも不安だったのですが、IT化のおかげですんなり進みました。
渡航後5日間の隔離期間にonlineで新居の内覧をし、渡英10日後には新居に引っ越しました。
都心から電車で15分ほど離れた住宅街、その中の築130年弱の歴史感じられる家です。

写真では家の主のように移っておりますが、実際には2-3階が大家さんで私は1階に住んでいます。
部屋の中に鍵もあり、風呂トイレも別なのでprivateは確保されています。ロンドンは家賃が非常に高く、神戸の2倍以上します。
ただ私はこういったShare Styleなので家賃も相場よりも格安で済みました。
庭は大家さんとの共有地ですが、基本的に大家さんが綺麗に仕上げてくれており、リスやキツネ、近所の飼い猫がよく庭を通り過ぎているのも見えて、乙な感じです。
大家さんは非常に好意的で、入居当初は部屋の暖房の付け方から、電気ガス水道の契約など様々な事を教えてもらいました。
親切なLab membersと大家さんに囲まれ、神戸と同様にロンドンでも、幸いなことに公私において周囲の人間に恵まれているようです。

海外に住むと日本を新たな視点で見直せます。イギリスは日本の2/3程度の面積ですが、人口は日本の半分程度、そして山が少なく可住地は日本の2倍あり、そのためロンドンのような大都会においても明治神宮の数倍規模の公園が多数あり緑にあふれています。

平坦な土地で、地震や台風なども無いため、様々なインフラの維持管理も日本より割安なのではないでしょうか。
ロンドンは常に自治体職員が道路や公園の掃除をしており、緑多い街の美化に日本よりも国や自治体が費用を多くかけている印象です。
そのため環境問題等に対する意識が自然と強まり、欧米で環境政党が存在する理由も理解できます。

一方、日本は様々な天災に苦しんできたからでしょうか、様々なシステム・製品において細かい配慮がなされ非常に几帳面です。
日本を当たり前と思ってしまうと、海外での仕事・生活は泣きを見る事になります。このような環境は日本人から見ると非常にStressfulに感じるかもしれません。
しかしそのような杜撰にも見えるシステムはむしろ合理的でもあり、例えばロンドンでは電車やバスの時刻表には正確な時間は書かれておりませんが(この時間は約5-10分おきとしか書いてないのです。。。)、そのようなTime Tableの元では数分の遅延など謝罪をする必要もありません。
また私がCovid-19ワクチンのBooster Shotを受けた際も簡易な説明書を渡されただけで、同意書へのサインも必要なく即座に注射をしてくれました。
大量の同意書を印刷し患者さんに渡して説明、その都度、外来診療がStopする事に辟易としている日本の診察現場を経験している私から見ると、ワクチン希望者がSmoothにそしてSpeedyに摂種されていく様は大変羨ましくも感じました。

イギリスは日本と様々な点で共通点もあります。島国である事、車の左側通行、議院内閣制、皇室文化、あとはお茶好きもそうでしょうか。
この中で伊藤仁文らイギリスに留学経験がある者らがイギリスを参考に議院内閣制の明治新政府を作り上げたことはよく知られておりますが、伊藤博文の留学先も実はUCLです。

今でもUCLは外国人を多く受け入れており、現在は53%の学生が外国人で構成されており、150か国以上の人が在籍しているようです。
こうした多様性はUCLだけでなく、ロンドンに住んでいても感じられ、ロンドンの人口の35%が英国以外の生まれらしいです。
アメリカも多様性で有名ですが、イギリスの多様性は比較的最近成り立っており、第二次世界大戦以降の旧植民地の移民受け入れから始まっているようで、確かにインド系が非常に多く感じますし、黒人もカリブ海諸国やケニアにRootsがある方々が多い印象です。
ちなみに現在のロンドン市長もパキスタン系でロンドン市長としては初のイスラム教徒らしいです。
私自身、Facebookの写真に対して「顔つきが留学行ってからインド化しているね」、と部活の大先輩にご指摘頂きましたが、果たして皆さまいかがでしょうか?
人種とは打って変わって、多様性が貧しいイギリスの食事では、様々なスパイスを駆使するカレーを始めとするインド料理は私にとっては欠かせないものになっております。
神戸大眼科の大学院に入学後、緑内障を課題として頂戴してからは、視野は加齢とともに狭くなるものとばかり思っておりましたが、留学することで、文化・社会背景の違いを感じ、改めて日本の生活が違って見えた経験は、まるで緑内障においては不可能であった視野の広がりを達成したようです。
今後は日本に戻って来てから仕事においてイギリスでの経験を還元できるように、そして留学して良かったと胸が張れるように、日々無駄に過ごすことが無いように精進したいと思います。

充実した毎日をロンドンで過ごしておりますが、今回縁あってCordeiro Labに採用して頂いたのは中村先生の強力な推薦があったからこそ、このような素晴らしい機会を与えて下さった中村先生ならび神戸大眼科の先生方に対して深く感謝しております。
最後に、私のように楽しい海外生活をしてみたい、と留学を希望する後輩の先生が増えることを期待しております。

過去の主な留学研究者

中村 誠
Pennsylvania State University, College of Medicine, Department of Ophthalmology, and Cellular and Molecular Physiology, USA(1999.10.1-2001-9.30)


中西 裕子
Wilmer Eye Institute, Johns Hopkins University School of Medicine, USA Post-doctoral Fellow(2003.12-2006.3)


楠原 仙太郎
University College London (UCL), Translational Vision Research (Professor David Shima), UK (2012.6-) ≫留学記を見る


金森 章泰
Department of Ophthalmology & Visual Science, and Pathology & CellBiology, University of Montreal, Canada (2008.6.1-) ≫留学記を見る


今井 尚徳
Pennsylvania State University, College of medicine, Department of Ophthalmology, and Cellular and Molecular Physiology, USA(2007.7-2009.8)


近藤 直士
The Wilmer Ophthalmological Institute of the Johns Hopkins University School of Medicine, USA (2009.4.1-) ≫留学記を見る


栗本 拓治
Research fellow, Laboratory for Neuroscience Research in Neurosurgery and F. M. Kirby Neurobiology Center, Children's Hospital, Boston, Harvard Medical School ,USA(2008.9-2010.8)


三木 明子
The Wilmer Ophthalmological Institute of the Johns Hopkins University School of Medicine, USA (2009.9.1-)



松宮 亘


Byers Eye Institute, Department of Ophthalmology, Stanford University School of Medicine, USA(2019.10.27-) ≫留学記を見る その①
Byers Eye Institute, Department of Ophthalmology, Stanford University  School of Medicine(2019.10.27-) ≫留学記を見る その②


盛 崇太朗
University College London (UCL), Institute of Ophthalmology (IoO),
Translational Vision Research (Professor Francesca Cordeiro), UK (2021.9-)

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